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仙台家庭裁判所 昭和57年(少)1999号 決定 1982年10月08日

少年 A(昭○・○・○生)

主文

少年を強制的措置をとることのできる教護院に送致する。

少年に対し、昭和五七年一〇月八日から向う一年間に限り四〇日を限度として強制的措置をとることができる。

理由

(非行事実)

少年は、昭和五七年二月九日○○警察署長から万引により宮城県○○児童相談所に通告され、同月六月二八日一時保護所に入所したところ、入所中も無断外出して車上荒しなどを繰り近したため同年七月二七日教護院a学園に入園したものであるが同園に入園中も、同年八月五日及び同月二〇日、同月二二日から同月二九日まで、同年九月四日から同月五日まで、同月九日の五回にわたつて無断外出を繰り返しては車上荒しやシンナー吸引、喫煙などの非行を行なつたものであり、もつて保護者の正当な監督に服しない性癖があり、自己の徳性を害する行為をする性癖があつて、その性格又は環境に照らして、将来、窃盗等の罪を犯す虞れのあるものである。

(法令の適用)

少年法三条一項三号イ・ニ

(処遇の理由)

少年は、小学二年生頃から家出や金銭の持出し、車上荒しなどの非行を行うようになり、中学に入学してからも同様の非行を繰り返して前記のとおり教護院入院に及びその後も無断外出して非行を繰り返しているものであり、少年を在宅で指導することはもはや困難となつている。

更に、精神科医の診断によると、少年には軽度の精神遅滞と脳器質性障害の疑いがあり、自らの行動に対する洞察を充分には持ち得ないとされていることや、教護院においても無断外出を繰り返していることを併せ考慮すると、医療少年院に少年を送致することも考えられなくはない。

しかしながら、少年の年令や精神発達の程度、少年の非行がさほど反社会的なものでないこと、教護院での矯正教育も緒についたばかりであつて、同院においても服薬治療は可能なことなどに鑑みると、少年を教護院において継続して指導することが相当であると判断する。

なお、本件は、宮城県○○児童相談所長より、少年を医療少年院に送致することが相当として児童福祉法二七条一項四号に基づいて当庁に送致されたものであるが、本件受理後同所長から少年を医療少年院に送致することが困難な場合は、追完して四〇日の強制的措置をとることの許可を求める旨の上申書が提出されており、このような場合少年法二四条一項二号によつて教護院送致決定をなすときにも、同法一八条二項の措置をとることが可能と解すべきであるところ、本件においては、少年のこれまでの行状に鑑みると強制的措置の必要性が認められるので、少年を強制的措置のとることのできる教護院に送致し、併せて少年に対し、本決定の日から一年間に限り四〇日を限度として強制的措置をとることができることとする。

よつて、少年法二四条一項二号、一八条二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 河村潤治)

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